Doughnuts Hole/おとなの掟(白黒つけること)

※若干のネタバレがあります。ドラマの未視聴の方はご注意ください。

 

毎週楽しみにしていた「カルテット」が、とうとう終わってしまった。

 

「逃げ恥」同様、本編の面白さもさることながら、タイアップ曲のインパクトが大きく話題を集めたドラマだったと思う。

 

 

「おとなの掟」は椎名林檎様の作詞・作曲である。言わずもがな天才である。

 

曲中では、「2つの相反するもの」が一貫して描かれている。

「真っ黒な中」「真っ白な息」、「嘘」「本音」、「好き」「嫌い」、「正解」「不正解」、「ト書き通り」「アドリブ」、「幸福」「不幸」、そして「白」「黒」。

 

ドラマの中で、カルテットドーナツホールの面々は、自分の人生における「音楽」の位置付けに苦悩する。音楽を趣味にすることと、夢にすることは、度々「アリとキリギリス」の話にたとえられる。音楽を仕事にできなかったけど、趣味にもできない自分たちは、夢の沼に沈むキリギリスなのではないか?

 

クライマックスに向けて、各々は自分の人生における音楽に「白黒つけ」ようとし始めるが、結局それは曖昧になって終わる。彼らの音楽が趣味となったのか、夢であり続けたのか、結論は描かれなかった。

 

軽井沢でのコンサート前、彼らの元に届いた手紙の中には、「なぜ辞めないんですか?」という言葉が繰り返されていた。自分の中の音楽に「白黒」つけた人からの、「なぜ白黒つけないの?」という疑問。

「意味がないのに、将来がないのに、無駄なのに、なぜ辞めないのですか?」これは、このドラマを通して、夢と現実の狭間で揺れている視聴者に向けられた問いかけでもあった。

 

彼らが自身の音楽に「白黒」つけなかった理由こそが、あの問いかけへの答えであり、音楽を好きでい続ける理由であるが、それについてはカラオケボックスでの会話や、ドラクエのテーマを楽しそうに聞く少年たちや、第9話でのすずめのセリフに現れていたと思う。

 

そして、主題歌の「おとなの掟」である。

冒頭で触れたとおり、曲中では一貫して「2つの相反するもの」が描かれるが、クライマックスでは「自由を手にした僕らはグレー」というフレーズが現れる。ドラマでも、音楽に白黒つけることをやめたカルテットドーナツホールは自由になる。その世界観を、わずか数分のこの曲で見事に表現している。椎名林檎様。言わずもがな天才である。